ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜


 紅潮したローズの頬を彼の手がゆっくり滑っていき、そのまま細い首筋に下りていく。

 吐息とともに彼は何かをぐっとこらえるように拳を握りしめて下ろした。

 少し乱れた金髪をゆっくり撫でつけてから、ローズの顔を上げさせる。

 エヴァンの言葉は、思いがけないものだった。

「それじゃ、ローズマリー、ぼくと人生をともにしてくれないか?」

 どういう意味? 心臓が飛び出すかと思うほど早鐘を打ちはじめたが、あくまで慎重に答える。

「ええ、もしできることなら喜んで。でも……」

「できるとも。ぼくと結婚してほしい。ウェスターフィールド子爵夫人になってほしいんだ」

「でっ、でも! たった今……」

「でも、は聞かないよ」

 エヴァンはにやりと笑った。緊張していた彼の瞳に次第に勝ち誇った輝きが増していく。

「叔母や祖母が何を言おうと関係ない。ぼくは、自分の結婚相手は自分で選ぶつもりだから。ローズマリー、返事は?」

「だったら! わたしの返事なんか、お聞きになるまでもありません!」