次々に飛び出す耳を疑いたくなるような言葉。
優しく愛をささやいた同じ唇で、これほど冷たい科白を平然と言ってのけられる人。こんな男に恋した自分こそ、イングランド一の大馬鹿だ。
もうたくさんだわ!!
いそいで涙をぬぐうと、彼を見つめ返し了解したことを示す笑顔を繕おうとした。
どうぞ、落ち着いて別れの言葉を言えますように。
だが何も言えなかった。微笑のかわりに再び涙がこぼれ、喉からすすり泣きが漏れる。
我慢できなくなって彼に背を向け、ドアに手を伸ばした。
だがその手が取っ手に触れるより早く、ローズは彼の力強い腕に引き寄せられていた。
「もちろんどうするって? 言ってごらん」
彼が耳元で畳みかけるようにささやく。
「……ひどい人!」
ローズは彼から身体を離そうと激しくもがいた。
