ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜


「そんなことをわたしに一言の断わりもなく、どうして勝手に決めてくるんです?」

「あなたが耳を貸さないからに決まってるでしょう。子爵ともあろう御方が、いつまでもお一人身では困ります。お母様が生きていらっしゃったらどのくらい心配なさるか考えてごらんなさい。とにかく明日、ダンバード侯爵家のパーティで、レディ・アンナをよくエスコートしてくださいね。これはあなたのお祖母様のご命令ですよ」

 祖母の名を出して昂然と言い放つウィルソン夫人に、エヴァンは深いため息とともに答えた。

「アンナとは……、いいえ他の誰ともですが、とにかく結婚するつもりはありません。少なくとも今すぐは。余計なおせっかいは控えていただきたいですね。お祖母様にはわたしからもう一度はっきり申し上げておきます」

「まぁ! お祖母様のご容態がさらに悪くなっても構わないと?」

「誰がそんなことを言いました?」

 この話はまさか……。いいえ、間違いない。エヴァンの縁談だ。

 ローズの目の前にぽっかりと底知れぬ穴が開いたような気がした。