「なぜまだそんな格好をしてる? この前買ってあげたドレスは気に入らなかった?」

 エヴァンは書斎の二人がけカウチに腰を下ろすとローズを隣に座らせた。

 最初は決まり悪そうにしていた彼女も、何日か経つと大胆になってくる。エヴァンに甘えるように肩に頭をもたせかけて答えた。

「あれは貴婦人方が召されるドレスですもの。わたしがああいうのを身につけても似合いませんわ。滑稽に見えるだけよ……」

「滑稽? とんでもないことを言うな、君も。頑固にいつまでこんな服ばかり着ているつもり?」

 エヴァンは彼女の地味な装いにわざと顔をしかめた。ローズは彼がまた夜会用の礼装をしているのに気づく。

「今からお出かけなのね」

「ああ、まったくつまらないパーティばかりでうんざりさ。君と二人でまた荘園にでも行きたくなってくるよ」