ローズはとっさに顔を両手にうずめてしまった。
 頬が火のように火照る。

 そんなことを、わざわざ確かめに来たの? 
 お願いだから、早く一人にして欲しい……。

 だが彼は出て行かなかった。

 ゆっくりとした動作で目の前に来ると、彼はローズの手を顔から引き離し、ベッドから立ちあがらせた。

 まるで騎士が愛する貴婦人にするように、その手を自分の唇に押し当てる。

 硬直しているローズを、エヴァンがそっと引き寄せた。耳にこもった声でささやく。

「君を愛している……。今までどれほど苦しかったか」

 驚いて身動きしたローズを抱きしめながら、エヴァンは低く言葉を継いだ。

「住んでいる世界が違う人だと、今日まで一生懸命自分に言い聞かせてきたよ。でも、さっき森の中で銃声と君の悲鳴を聞いたとき、まるで氷の手に心臓を捕まれたような気がしたんだ。君なしには生きていけないと、あの時はっきりと思い知らされたよ」