素足に傷がないことを確認し、さっと撫でるように手のひらを走らせると彼は立ち上がった。

 今度は彼女を両腕に抱きあげ、驚いて抗議する彼女を無視して馬の鞍に乗せる。

 その後ろに自分もまたがると、手綱を取り城へ向かって走らせ始めた。

 無言のまま、二人は城に戻ってきた。


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 大騒ぎで出迎えたリー夫人に手短に事情を説明し、ローズの世話を任せると、振り向きもせずに子爵は自室に上がってしまった。

 とても怒っているんだわ。

 馬鹿なことをした、と泣きたくなった。

 頭がひどく混乱して取り乱さないようにするのが一苦労だ。

 メイベルはぶつぶつ文句を言いながらも、ローズのために熱いお風呂を準備してくれた。

 顔と身体の汚れを落とし服を着替えると、やっと気分も落ち着いてきた。