すぐに彼は、「別に構わない。その方がいいならそうしてください」と言った。
さらに「何か頼みがあると言ったね? そのこと?」と問いかける。
その時、メイドがお茶を運んできたので話は途切れた。ローズはどういうふうに切り出そうかと思案した。
再び二人きりになると、思い切って率直に話してみることにする。
「マーガレット様は、とてもお寂しいんです。お父様もお母様もいらっしゃらず、たった一人の肉親であるあなた様もいつもお忙しくて、誰も御自分に関心を持ってくれる人がいない、そんなふうに感じていらっしゃいます」
子爵が目を細めたのを見て、ローズは少し微笑んで口調を和らげた。
「わたしなどが差し出た口を、と、お怒りにならないでください。ただ、兄上であるあなた様には、マーガレット様のお気持ちを、知っておいていただきたかったんです。本当に一人ぼっちでずっと辛抱してこられたんですから」
「妹だけじゃない。貴族の子弟というのは、大抵幼い時にはそんなものさ」
彼はやや厳しい声になり、残りのお茶を一息に飲み干した。
