「でー…誰って言ったっけ?その女」
「…牧原さん?」
「何組?」
「D組だけど―――、ちょ、若菜ちゃん?授業もうすぐ始まるよ?」
進めていた足ろ、ピタっと止め、あたしは振り返る。
「そんな事言われて嫌じゃないの?」
「そ、それは…」
「アンタは何も悪くないじゃん。悪いのはあっちでしょ?」
「だ、けど…」
「別にこれは美奈子の為じゃない。あたしの為でもあるの。この前のケーキのお礼」
美奈子の泣きそうな目が見てられなかった。
そう、別に美奈子の為じゃないの。
こんな事、あたしには関係ないんだから。
でも、でもね…
そう言う奴らって、ほんと許せないの。
D組の扉から顔を覗かせ、辺りを見渡した。
何人かのグループがざわついて話しているものの、その女が誰なのかも分からない。
だから。
「ちょ、牧原ってどの子?」
今から教室を出ようとする一人の女の子の肩に触れ足を止めさす。
「窓側に居る、…あの人」
「ありがと」
目を向けると4人で騒いでる派手な女達。
ほんと、ほんと嫌いなタイプ。
過去をさかのぼって、自分があんなんだった頃を思い出すと、ホントに馬鹿さ加減が広がる。



