「…若菜ちゃん?」
「え?」
「浮かない顔だね」
苦笑いする千沙さん。
目の前に置かれたカフェオレを口に含むと、
「恭とはこのまま会わないの?」
なんて戸惑う様子もなく淡々と口にした。
「え?」
「気になってた。若菜ちゃんの事…」
「……」
「連絡しようか、どうしようか迷ってたけど、あたしが首突っ込まない方がいいかなって、」
「……」
「恭が若菜ちゃんを振ったって、蒼斗から聞いて…」
「……」
「ごめんね。あたし余計な事言っちゃって」
「余計な事?」
「ほら、恭は誰とも付き合わないよって、言った事」
「あー…別にいいんです。もう終わった事なので」
もう終わったの。
あの時から、もう終わってるから…
「終わった?」
「はい。きっぱり無理って言われたんで」
「それからは会ってないの?」
「会ってないですね。会う必要もないので」
「でも、まだ好きでしょ?」
「……」
好き。
忘れようと必死で思ってきたけど、ふとした時に恭を思い浮かべてしまう。
なんでかな、
なんでだろう。
なんでこんなに恭を想っちゃうんだろう…
だから、胸が痛い。



