高校最後の三学期が始まった。

あと少しで卒業。

正直言って、この先の事なんて全く考えてなくて。

麗美さんの店を手伝う事も、お姉ちゃんの街に行くことも、結局はどっちも正解はなくて。


決めた先は大学4年間の進路しかなくて。

そこに行けば、何か見つかると思っただけ。


だから毎日バイトに明け暮れるくらいだった。

学費を稼いで母に頼らない事。


ただ、そんな事を思いながら、毎日を送ってた。

学校帰り久し振りにビルを見上げてた。

見上げる先は何故か恭が居たビル。

ただ、無意識に見てた。

別に屋上に行こうとは思っていない。


だけど久々に見上げる空は白く、空からは小さな雪が舞い降りていた。



「…若菜ちゃん?」


誰かがあたしを呼んだ。

ビルの屋上から視線を落とし、あたしは振り返る。


「あ、」


久し振りに見るその蔓延の笑みに、あたしも同じく頬を緩ませた。


「久しぶり、若菜ちゃん」

「久しぶりです。…千沙さんは元気でしたか?」

「うん。元気だよ。あれから一度も入院してないんだ。結構順調だよ?」

「そうですか。良かったです」

「ねぇ?今から時間ある?ちょっとお茶しない?外じゃ寒いし」


そう言って千沙さんは両腕を擦って白い息を吐いた。


「いいですよ」


ニコッと笑った千沙さんとともに駅前の喫茶店に入った。

外とは違い、暖かな空気に身が温まる。


「雪だねー…初雪」

「……」


窓から眺める雪はパラパラと落ち、地面に落ちては溶けていく。

入ったものの千沙さんを目の前に、どうしたらいいのか分かんなくなってた。

千沙さんを見ると恭を思い浮かべてしまう。


逢いたい。

…恭に逢いたくなってしまう。