「あの…聞いてもいいですか?」
「何かしら?」
「恭の事、好きですか?」
そう言ったあたしにお母さんはフフッと小さく笑う。
「えぇ、もちろん好きよ。たったひとりの息子だから」
「……っ、」
「でも、あの子はあたしの事を母親だとは思ってないわ。さっきも言われたの、母親とは認めないって。一度も育ててもらった覚えはないって、」
「で、でもそれはお父さんが引き離したからであって…」
「そうね。でも当時はあたしはただの愛人だった。だからあたしは何も言えないのよ」
「どうして…そんな結婚してる人を好きになったんですか?」
…あぁ、あたし絶対に聞いちゃいけない事きいてる。
愛人関係なんてダメって分かってる。
でも、そうじゃなきゃ恭なんて産まれてなかった。
もう複雑すぎて、何も言えない。
「さぁ、どうしてだろう。あの頃は恭のお父さんの事が本気で好きだったのかも知れないわね。結婚しててもいいって…」
「……」
「でも恭の事はずっと忘れたことはなかったわよ。母親だっておもわれなくてもいいの。ただ、あの子には幸せになってほしい…」
「……」
「恭の事、よろしくね」
「えっ?」
「母親としてやってあげるべき事を出来なかった今、やってあげたいって思うけど、もうあたしじゃ無理だから」
「……」
「申し訳ないって気持ちが強い分、幸せになってほしい。だから宜しくね」
「いや、あたしは別に…」
付き合ってなんか、ない。
むしろ無理だから。



