「失礼ですけど、周りを批判するつもりですか?」
「何が言いたいのかね?」
「本当の恭の気持ちを考えた事ありますか?周りがどうのこうのじゃなく、あなたたちが恭をそう言う風にしているんですよね?」
「…ちょっ、あなた何言ってるの!?」
今まで黙っていた女が怒りを満ちた声で素早く入りこむ。
でも、あたしは止めることなどなく、口を開いた。
「恭の事、ろくでもないって言ってましたけど、あなた達はどうなんですか?恭をどこまで縛りつけるんですか?仕事のためですか?」
「君に分かるはずがない」
「えぇ。あたしには分からないです。でも、恭の気持ちは分かってるつもりです」
「アイツが可哀そうとでもいいたいのかね?何不住させた覚えもない。何もかも与える物は与えている」
「それも肝心な事だと分かっています。でも、それより肝心なのは恭の気持ちですから。失礼します…」
軽く頭を下げ、その場から遠ざかる様に素早く足を進めて行く。
この旅館の出入り口が見えた所で、面倒くさそうに壁に背を向けている恭の前でお母さんが何か必死で伝えている光景が目に入る。
その光景を少し見つめていると、
「ちょっと、あなた!!」
背後から剣幕のような声が突き刺さった。
振り返ると、怒りを露わにさせているさっきの女があたしを鋭く睨んでた。



