「将来に係わる事を聞いただけだ。だいたいお前は兄と姉と違ってフラフラしすぎだ」
「そんな事アンタが言える立場じゃねーじゃん。アンタがフラフラしてっから俺が居んだろ」
「…っ、」
ピリピリとした空間。
その会話を耳にする様に現われたのはもう一人の女性だった。
…恭のお母さん?
「どうしたの?」
そう言って、あたし達を不思議そうに見つめた。
「つか、アンタも大変だな」
恭はお母さんであろう人にそう言って、馬鹿っぽく笑みを見せる。
そして恭は繋がれていた手を離し、あたしの背を軽く押した。
「行くぞ」
「え、ちょっ、」
戸惑うあたしに背を向けて歩きだす恭。
その背中を追う前に、お母さんが後を追った。
「待って、恭!」
だから行く事なんて出来なかった。
二人の会話を何となくこれ以上聞きたくなかった。
実の母親だとしても。
「すまないが、恭と別れてくれないか。今から将来に向けて大事な時なんだ。ロクでもない人との係わりがダメにしていく。君も分かるだろ?」
不意に聞こえて来たお父さんの声に思わず眉間に皺が寄った。
将来に向けて大事な時って、なに?
ロクでもないって、恭の周りをそんな風に思ってんの?
だからだったんだろう。
思わずあたしは口を開いてた。



