「あたしだけ張り切って、どーすんのよ」
制服姿の恭とは違い、真っ黒のタイトのドレスで身を包んだあたし。
あたし、浮いちゃうじゃん。
「なんでここに?」
「なんでって、誘って来たのはそっちでしょ?」
「そーだけど、だってお前…」
「昨日の恭の顔思い出すと行かなきゃ行けないって、そう思った」
「……」
「でも、やっぱりあたし…」
俯くと同時に少しだけ唇を噛みしめる。
出来ないって、言葉がどうしても言えなくて…
「だったら辞めてもいいから」
「…え?」
柔らかく抱きしめられるこの感覚に目を瞑る。
「俺の身勝手な事に若菜を巻き込みたくもねーし。ただ、これで開放されるかもって思っただけ」
「でもそれじゃあ…」
「そんな事、お前が気にすんなよ」
そっと離れた身体。
フッと笑った恭の顔が何故か切なく見える。
“俺を助けると思って…”
“恭の事、助けてあげなよ”
“恭は辛いんだよ、寂しいんだよ”
色んな言葉が脳を過る。
演じ切れるかどうかなんて分んない。
やってみなくちゃ分かんない。
少しでも恭の役に立てるのなら…



