澄んだ空の下で


着いた場所は高級とでも言いたい様な旅館。

ゴージャスよりも落ち着いた雰囲気を出す、小奇麗な和の旅館だった。


なのに、門の扉の横に居る恭は面倒くさそうにタバコを咥えてた。


「アイツ、場違いじゃね?なんで制服なわけ?」

「さぁ…」


壁にもたれている恭は着崩した制服に咥えタバコ。

俯いてスマホを触っている。


「うーん…この状況に喧嘩売ってんな」

「恭はあたしが来るって事は知ってるんですか?」

「いや、知らねーよ。麗美だと思ってんじゃねーの」

「そっか…」

「ま、とりあえず若菜ちゃん行って来なよ」

「やっぱ行かなくちゃダメですよね…」

「まぁ、来たしね。恭の事、助けてあげてよ。俺には出来ない事だし」

「……」


ニコっと口角を上げたセナさんは、車から降りて気付いた恭に「遅くなった」と一言掛け、助手席に回り込んだ。


開かれるドアに一瞬躊躇したものの、必然的に動く足に息を飲み込んだ。


「でも、無理する事ないと思うよ。じゃーね」


セナさんに頭を下げ、恭の所に足を進める。

目の前の恭は目を見開き、驚いた表情を見せた。


「…若菜?」


小さく呟く恭の声。

そして、あたしの後ろを通り過ぎて行くセナさんの車の音を耳を掠めた。