裏口から出ると、車体に背をつけて立っているセナさんが目に入る。
「え、あぁ…若菜ちゃん?」
一瞬、驚いた表情をするセナさんは咥えていたタバコを足で踏み潰した。
「…はい」
「ごめん、ちょい誰だか分んなかった」
「それって、どー言う意味ですか?」
「うん?いつもより大人っぽいって事」
「はぁ…」
「そこ、喜ぶとこだかんな」
「そうですかね」
「そうですかね、って…時間ねーし行くよ」
「やっぱ行かなきゃダメですかね?」
「は?」
助手席のドアを開けたセナさんは首を傾げる。
「いや…なんか、」
「うん、まぁ乗って。話しながら行くから」
「あー…はい」
ってか、もう既に行く気満々じゃない。
話しながら行くって事は、どーせ着くって事じゃん。
だったら何で、あたし来たんだろう。
何も深く考えてなかったけど、恭の顔を思い出すと、つい来てしまった。
「…あいつ物凄い切羽詰まってるよ」
「え?」
助手席に乗り込んだあたしは、隣で運転するセナさんに視線を向ける。



