「じゃあ、どうしてここに来たの?」
「え?」
「会いたいからじゃないの?椎葉くんが決められた人と結婚なんてしてほしくないからじゃないの?」
「……」
「誰にも取られたくないって、そう思ったからでしょ?」
「だけど、」
あたしの事なんて何とも思ってないよ、恭は。
昨日のキスの意味だって、ただしたかっただけ。
恭にとっては、その場しのぎに違いない。
でも、あたしはそれだけでも良かったんだ。
「どうして椎葉くんは若菜ちゃんに頼んだんだろうね」
「さぁ…たまたま昨日一緒に居たからだと思います」
「たまたまね。でもずっと前から決まってる事なら、いくらでも他の人に頼める期間はあったはず」
「……」
「セナが言ってたよ。椎葉くんは変わったって、若菜ちゃんと出会ってから変わったって」
「あたしと…」
「あたしはよく知らないけどね。でも変わったのは若菜ちゃんも…」
「……」
「はい、出来たよ。裏でセナが持ってるから」
「…はい」
鏡に映る自分はまるで自分じゃない。
いつもここでセットアップしてもらうけど、それ以上に別人だと思った。
これも麗美さんのおかげ。



