澄んだ空の下で


最寄駅に着いた頃にはもう18時をとっくに過ぎてた。

もう無理だと分かって居ても、なぜか恭に会いたくなった。


「-―…麗美さんっ、」


裏口から入って、麗美さんの部屋を開けてすぐ、目に入った麗美さんに勢いよく声を出す。


「え、あっ、若菜ちゃん!?」


目を見開いた麗美さんはすぐに笑みに返る。


「あの、恭は…」

「やっぱ来ると思った」

「え?」

「あたしの勘。…若菜ちゃん来なかったら、あたしが変わりに頼まれてたの。でも、そんなの若菜ちゃんからしたら嫌でしょ?って言うか、あたしが出来ない」

「……」

「でも良かった。若菜ちゃんは来るって思ってたから。まだ間に合うから用意しよ」

「はい」


って、そう言ったものの、みるみる内にかわっていく自分を鏡で見ながら、不安が込み上げていた。

やっぱ、あたし…

お店で働くみたいに着飾って、そこまでしなくちゃいけないの?って思うくらいの自分の風貌に、焦りが芽生える。


どうして恭はあたしを?


「あの、麗美さん…」

「うん?」

「初対面なのに、恭の両親に――…」


会えないです。

って、言葉が何故か言えない。


相手はセレブなんだろうと思うと、こんなあたしみたいな一般庶民なんて…