刻々と過ぎて行く時間。
気になって気になって、どうしようもないくらい恭の顔が浮かぶ。
でも目に前で眠っているお姉ちゃんを置いてまで何故か行けなかった。
「…大丈夫か?」
暫くして勢いよく開いたドアにビクっと身体が上がる。
「あ、若菜ちゃん?」
そこには息を切らした彼の姿が目に入る。
「大丈夫みたいですよ。暫く安静みたいですけど」
「そっか」
「昨日からお腹は擦ってました。疲れ…ですかね」
「俺が言っても辞めねーんだよな、仕事」
「そうなんですか…」
「昨日何かあった?」
「え?」
「実家に帰って、…お母さんと」
「あ、」
もう気付いていたんだろうか。
心配そうに見つめてくるその瞳にどう言ったらいいのかなんて分んなかった。
「やっぱり何かあったでしょ?」
「いえ…」
「お母さんに会いたくないとは聞いていたからね…」
「……」
「だけど俺もこのままじゃダメって分かっているから、会いに行こうとは思ってるけど」
「そう、ですか…」
それ以上何も言えなかった。
お姉ちゃんに言うなって言われたからじゃない。
あたしも母の事について何も言いたくなんてなかった。



