「ねぇ、花城さんって、蒼斗とどー言う関係?」
クルっと廊下の角を曲がった瞬間、一人の女が壁にもたれてあたしをジッと見てた。
…やっぱしな。
「…別に」
「なんかすっごく仲良さそうに見えたけど。アオとか呼んじゃってさ。もしかして秘密で付き合ってるとか?」
腕を組んで見下すようなその視線。
「そんな訳ないから」
「ふーん…そう。だったらいいけどね」
フイっと顔を背けた女に思わず舌うちしそうになった。
だからアオとは話したくないって言ってんのに。
そんな事すら何とも思ってないアオが平和な男にしか思わない。
でも、まぁこんな事は昔っからの出来ごとだから今更何とも思わないけど。
…にしても。
アオに人気があるのは分かる。
でも、あたしは関係ないじゃん?
ただ、話してただけ。
ただ、話してただけなのに…
一息吐いて教室に入った。
普段使ってないスマホでも、やっぱし手元にないと不安が過る。
でもどう考えたって、あのビルだと思う。
あの男が絶対に知ってるはず。



