「恭はさ大切な人とは寝ない主義なの」
「……」
「大切な人は傍から居なくなるから」
「居なく…なるから?」
「うん。だから身体の関係を持ったら、また求めたくなるでしょ?だから寝ないし、むしろ好きな人も作らない」
「それって前の彼女ですか?」
「それもあるね。でも今ではフッ切ってるよ。でも唯一、信頼していた母親が亡くなってからポッカリ穴が開いちゃったんだろうね」
「……」
「父親は教育熱心で、今の恭の事はよく思ってないの。大企業の息子だからね!」
「……」
「お兄さんとお姉さんは頑張ってるけど、恭にも後次って言うの?世間の目もあるし。結婚する相手は決まってるらしいけど…」
「……」
…え?
なに、それ。
千沙さんが淡々と話す言葉に思わず目が泳いでしまった。
そんなあたしに気付いたのか、千沙さんは少しだけ顔を歪める。
「だから恭が誰とも付き合わないって訳じゃないけど、きっと自分の所為で大切な人が苦しめられるのが嫌なんだろうね」
「……」
「若菜ちゃんを避けてんのは、それだよ?」
「…はい?」
「恭のお父さん、結構うるさいからね…」
「……」
そう言って千沙さんは、テーブルに置いてあったペットボトルの水を口に含んだ。



