「…満足か?」
「……」
不意に離れた唇の後、恭が小さく呟いた。
…満足ってなに?
これって、あたしがしてほしかったみたいじゃん。
でも、避けなかったあたしもあたし。
この場に居ても経ってもいられなかった。
だから咄嗟の行動。
目の前に居る恭の身体を押しのけ、車から出た瞬間勢いよく走ってしまった。
「はぁ…」
思わずため息が出る。
そして、ふと触った唇にもう一度ため息が出た。
なんで、あんな事…
遊ばれてるとしか言いようがない。
でも、なのに好きなあたしって…
キスをされて嬉しさ半分、辛さ半分。
またよく分からない感情が、苛々する。
だからって、そのままの足で何でここに来たのか自分にでも分からなかった。
見上げる場所は大きな建物。
そう、千沙さんが居る病院だった。
初めて会ったあの日以来、ここには来ていない。
なのに何でか分かんないけど、千沙さんに会いたくなった。



