そのあたし達の視線を感じたんだろうか。
アオは顔を上げると、その瞳であたしを見つめる。
そして電柱から背を離して、その足を少しづつ進めた。
やっぱ、あたしか。
「若菜ちゃん、あたしママの店で待ってる」
「えっ!?」
「なんか大事な話っぽいね」
「え、いや…待ってよ」
あたしから少しだけ距離をとった美奈子に声を掛ける。
「あたしが居たら話しにくいでしょ?終わったら来てね」
微笑んだ美奈子に、
「ごめん、美奈子ちゃん…」
アオの声が微かに聞こえた。
首を振る美奈子はあたしに向かって手を振り足を進める。
そして入れ違いであたしの前に立ったのはアオだった。
あれ以来…
アオがあたしに怒りをぶつけて来た日、以来だ。
こうやってアオと面と向かうのは。
「ちょっと、いいか?」
そう言われて断る理由なんて何もなかった。
そのままアオは背を向けて足を進めていく。
だから、着いて行くしかなかった。



