まだ息も整ってないまま席につくと、美奈子はどうしたの?と言わんばかりに顔を覗き込んできた。
「やっぱ、元気ないね。若菜ちゃん、何かあったでしょ?」
「別に何もないけど」
「…鶴の恩返し」
「はい?」
「うーん…美奈子の恩返し」
「は?アンタ何言ってんの?」
「だからまだあたし若菜ちゃんに恩返ししてないの」
「え?何の?」
真向かいに座る美奈子はグッと身体を近づけるように両手をテーブルに付けた。
「あたしが叩かれた時、若菜ちゃん助けてくれた」
「だから?」
「だから今度はあたしの番だよ」
「……」
何言ってんの、馬鹿じゃない?って、思った。
皆、口だけで終わって行く。
友達って、そんなもんでしょ?
利用して利用してうまく自分に得て行くもんでしょ?
必要ある時だけ、利用する存在。
昔っからずっと思ってた。
なのになんでだろう。
今のあたしは、美奈子をそんな風には思えなかった。



