「あー…何時だっけ?」
「15時。でも今日は若菜ちゃんに開けてもらったんだ」
ニコニコ微笑む千沙さんとは反対にあたしは二人から視線を遠ざける。
「ふーん…、んじゃあ用ねーから帰るわ」
視界の端の方で恭が動いたのを感じた。
でも。
「あっ!待って、恭!!」
その千沙さんの張り上げた声に思わず視線を二人に向けてしまう。
「何?」
「若菜ちゃんも一緒に連れて帰ってあげて」
「は?」
…え?
声は出てないけど、あたしの口が不自然に動く。
なに、言ってんの千沙さん。
同じく恭も訳分かんねーって感じで千沙さんを見つめる。
「だから若菜ちゃんも」
「つか何で俺?セナに来てもらえよ」
「え?なんでセナちゃんなわけ?」
「……」
無言な恭から千沙さんの視線があたしに移る。
だけどその視線を避けてしまった。
「え…でも恭、車でしょ?」
「だったら何?」
「一緒に帰ってあげてよ。ほら、見てよ向こうの空」
千沙さんは窓に向かって指差す。
同じ様に目を向けると、どんよりとした黒い雲が近づいてた。



