「やっぱり…嘘だったんですか?」
「ごめんね」
「なんでそんな嘘…」
「大切な人は守りたかった。大切な人を失ってでもいいから、その人に幸せになってほしかった。…ただ、それだけ」
「それってアオの事ですか?」
苦笑いに小さくコクリと頷く千沙さんは何を思っていたのか、知りたくなった。
失ってでもいいから幸せになってほしいって、なに?
「あたし心臓が弱いの」
「心臓?」
「そう。だからね激しい事、出来なくて。例えば急いで走ったりとか、そー言うのが出来なくて。それに少し歩くと疲れちゃう」
「……」
「小さい頃からなんだけどね、それが悪化してきたのが蒼斗と付き合って半年してからだったの」
「……」
「とにかくしんどくて、毎日疲れて。蒼斗と一緒に居る時ぐらい楽しもうって、思ってても身体が言う事聞かなくて」
「……」
「その所為で、約束時間はルーズになるし、電車の駆け込みだって出来ない。で、病院に行くと入院宣言されてね…」
「……」
「それで、このままじゃダメだなって思ったの。蒼斗に迷惑かけちゃうって。蒼斗の行きたい所を全て断るようになってさ」
「……」
「だから別れようって、」
「それで、恭…ですか?」
千沙さんは一息吐きだし、小さく頷いた。



