「失礼します…」
ドアを開けて、小さく呟く。
仕切られている淡いオレンジのカーテンを遮る様にゆっくりと顔をだし、小さく頭を下げた。
顔を上げると、一瞬女の人は茫然としていたけれど、
「あっ!!ごめん、ちょっと窓開けて!窓!」
突然、大きな声を出した。
「まど…」
「そう、そこの窓あけて!」
「あ、はい」
言われるままに窓を開ける。
「ごめん、網戸も!」
「あっ、」
言われた通り網戸も開け、あたしは千沙さんに目を向けた。
千沙さんは蔓延の笑みで窓の外を見つめる。
「良かったー間に会った!」
そう言った千沙さんに首を傾げながら窓の外に目を向けた瞬間、
「あ、」
フワフワと風に乗って飛んでいくシャボン玉が目に入った。
「…シャボン玉ですか?」
「そうなの。15時の時間になるとね、いつもこの下の階に入院してる男の子がねシャボン玉してくれるの。でもあたしはいつもこの時間は点滴時間。だから窓開けられないんだー…」
千沙さんは悲しそうな目で右腕を見つめた。



