「何もかも嫌になっちゃってさ。その時にね、仲良くしてくれてた子が居たんだけど辞めちゃったの…」
「……」
「でも、辞めた事を今では後悔してる」
「……」
「だからと言って、今の環境が嫌いって訳じゃないんだけどね…」
そう言って、麗美さんは軽く息を吐き捨て寂しそうに俯いた。
「後悔って何に後悔してるんですか?」
思わず聞くあたしに麗美さんは下げていた視線を上にあげる。
「学校って言うか、その子に会えなくなった事かな…」
「その子に…ですか?」
「お父さんの転勤でね、海外に行っちゃったの。だから、あたしが辞めてから一度も会ってないんだけどね。今考えると、あの頃の一番の友達だったんだなー…ってね」
「……」
「ま、会えなくしたのはあたしの勝手でそうなったんだけどね。仲良くしてくれてたのに避けちゃったんだー…だからね、なんか若菜ちゃんの話し聞いて似てるなーって、そう思ったの」
「……」
「学校、もう少し考えてみなよ。この夏休み中にさ、何かが変わるかも知れないよ?」
「そう、かな…」
「そうだよ。それに…あたしは椎葉くんの事を悪くは言えないな」
「え?」
思わず麗美さんの口から出た恭の名前に声が少し上がる。



