ガチャ…とドアを開けると目の前にスマホを耳に当てた麗美さんが微笑んでた。
「…麗美さん」
「ちょっと若菜ちゃんの事が心配になっちゃった」
「……」
「悩み、聞くよ」
そっとスマホを耳から離した麗美さんの手があたしの頭に伸びてくる。
そして、ゆっくり撫でられた瞬間、不意にあたしの目から一粒の涙が落ちてた。
「…すみません」
素早く涙を拭うと、麗美さんは子供を扱う様に優しく抱きしめポンポンと背中を叩く。
「無理しちゃダメ。頑張んなくてもいいじゃん。…ね?」
こうやって麗美さんに弱い心を見せたのは初めてだったかも知れない。
少し落ち着いた後に、部屋に麗美さんを招き入れ、テーブルを挟んで真向かいに座る。
「…この街から出たいんです」
暫くしてポツリと呟いた言葉に麗美さんは一瞬目を見開いた。
「出たいって…それって学校辞めちゃうの?」
「…ですね。ほとんど行ってないんです。だから行ってる意味ないなーって…」
「え?なんで?なんで行ってないの?若菜ちゃん、結構真面目に行ってたじゃない?行きたくない理由って何?」
「……」
「…さっきも言ったけど、椎葉くん?…あれ?椎葉くんって若菜ちゃんの学校じゃないよね?じゃ、なんで?」
麗美さんは何が何だか分からないように首を傾げながらあたしに視線を向けてくる。



