「若菜ちゃん、なんかあった?」
「別に…」
「若菜ちゃんならNO1も夢じゃないと思うよ?ほら、他に行ったらさ、色々あると思うけど、ココなら安心して働けると思うけど。…この店が嫌い?」
「いえ、…そうじゃないんです」
「もしかしてだけど…あの人、椎葉くんと何かあった?」
「……っ、」
思わず麗美さんの言葉に声が出せなくなった。
「やっぱり、そうなんだ」
「……」
「ずっと気になってたの。指名なんてした事のない椎葉くんが何で若菜ちゃんを指名すんのかなぁーって、」
「……」
「だから、ちょっと気になってた」
「……」
「だからでしょ?ココで働くのは嫌なのは」
「…すみません」
気づけば、深いため息を吐き出しながらあたしはそう謝ってた。
だって、そこで働くと恭に会うでしょ?
それは一番嫌なの。
ほんとに避けたい事なの。
「…そっか」
麗美さんが小さく呟いた後、ピンポーン…と鳴る家のチャイムの音にビクンと少しだけ肩が上がった。
「……」
「…出ないの、若菜ちゃん」
「……」
「ねぇ、開けてよ。若菜ちゃん」
「え?」
「ごめんね、来ちゃった」
電話越しから聞こえる微かに笑った麗美さんの声。
コンコンと叩くドアの音に、あたしは必然的に玄関に向かってた。



