また学校に行かない日々が続き、気づけば夏休みを迎えてた。
だから少しづつ決心ってものが湧いてたんだと思う。
微かに聞こえてくる着信の音に、あたしはベッドに寝転んだまま手を伸ばす。
掴んだと同時に布団を剥ぎとり画面を見つめた。
…麗美さん。
「はい」
「あっ、若菜ちゃん?」
「はい」
「一軒ね、来てほしいって言ってる店があるんだけどさ。でも居酒屋ねんだよねー…」
暇を避ける為、あたしは麗美さんにお店を紹介してほしいと頼んでた。
麗美さんのあまり乗る気じゃない声が電話越しから聞こえてくる。
「別にいいですよ」
「いや、でもねほら。そこさ、居酒屋って言ってもカウンターだけの店」
「カウンター、ですか…」
「こじんまりとした所でさ、夫婦でしてたの。昔からのあたしの知り合いなんだけどさ。そこのね、おばさんが体調悪くて…」
「そーなんですか?」
「あっ、でも…あっ、やっぱ若菜ちゃんいいや、ちょっともう一度探してみるから」
「えっ、ちょっ何でですか?あたしそこでいいですよ」
「だって、おじさんと二人だよ?」
「でも、その人は麗美さんの知り合いでしょ?」
「そうだけど…凄く優しい人。でも、やっぱ若菜ちゃんにはココに来てほしい――…」
「それは嫌です!」
麗美さんが言いかけたのを素早く遮って、あたしは大声を出した。



