「……チッ、」
小さく聞こえる恭の舌打ち。
思わず叩いてしまった恭の頬。
その、手の平が自棄に痛む。
その瞬間、無意識の内に溢れる涙を拭う事すら出来なかった。
「最低…」
小さく呟いたあたしの声。
すり抜けるようにあたしは恭の前から姿を消した。
信じられなかった。
なんであんな風になってしまったのかと。
あたしが騙されていたのか、あれが本当の恭なのか。
今までは演技だったのか。
正直、今はまだ頭の整理がつかなくて、どうしたらいいのかも分からなかった。
あたしを騙そうとしてたわけ?
もしくはいい獲物だと思った?
涙が自然に溢れてきた。
結局は見離される運命なんだって。
結局は周りに振り回される運命なんだって。
そう、つくづく思った。
もう、会いたくないって、そう思った。



