「悪い、俺らつけてねーわ」
笑い声とともに聞こえたその声に、ドクンと心臓が高鳴った。
今、なんて?
あたし、犯されたの?
朦朧とする意識の所為か、状況がいまいち分からない。
そして濡れる瞳をゆっくり開けた。
涙の所為で視界がボヤケル前で、男が口角をゆっくり上げた。
「なぁ…やっぱ付き合わね?状況が状況だし」
そう言って、馬鹿にした様に笑う。
状況が状況ってなに?
声も出せない。
ここで怒鳴って大声を出す気力さえもない。
ただ、思うのは“妊娠しちゃう”…その事で頭がいっぱいだった。
「…-―終わったぁー?」
暫くして不意に聞こえた呑気な声に身体が異様に反応する。
忘れる事もないこの声。
ずっと前から聞きなれた声。
それが今、耳に張り付く。
「お前、やり過ぎじゃね?」
「別にあたしはヤッてないし。アンタ達でしょ」
「あーあ、相変わらずだなお前」
もう一度、視界が途切れそうになった。
…サエコ?
あんただったの?
その瞬間、大粒の涙が更に頬に走った。



