「つか、そんな目で見んなよ」
睨んでたあたしの目の前で、男はそう言いながら鼻で笑う。
「…でっ、」
「あ?」
「……っ、」
「ちょっとだけだからな」
スッと口元を覆ってたものが取られる。
その瞬間、
「なにすんのよっ!」
あたしの口から大声が響きわたった。
「あんまでけー声出すなって」
「あんた達がこんな事するからでしょ!」
「つか、俺らを悪く言わねぇでくれる?」
「え?」
「俺らはただ従ってるだけ」
「え…、従ってる?」
「そう」
「誰に?」
「頼まれてさー…」
「たの、まれた?」
…誰に?
頭を過るのはその言葉だけだった。
思い当たるのは全くなくて、むしろ思いたくもないけど“…恭”なんて思ってしまった。
「だから、ちょっと借りるね。欲求不満なわけ」
そう言った男の後ろからクスクス笑い声が聞こえる。
「…ちょっ、」
途切れる声とともにもう一度口を塞がれ、グランと頭が揺れた。



