階段を降りて木の分厚い扉を開けると、結構広い室内だった。

ほのかに香る木の匂いが心地よくて、それに混じって聞こえてくるシックな音楽。


少し暗みがかかった明るさが丁度いい。


「ママっ、」


隣に居る美奈子が手を振る先に見えるのが一人の女の人。


「…お母さん?」


そっと美奈子に呟くと、美奈子はコクンと頷く。


…綺麗な人。


見た瞬間そう思った。

ボブの髪を緩くカールさせ、見た感じで上品そうって思うくらい。


あたしの母とは大違いだ。

ケバイ母とは大違い。


「ママ、同じクラスの若菜ちゃん」

「初めまして。美奈子の母です」

「あ、初めまして花城若菜です」

「いつもごめんね。若菜ちゃんの話はよく聞いてるけど、迷惑掛けてないかな?」

「いえ、そんな事ありません」



むしろ、あたしのほうが迷惑かけてます。

ってのは、何だか言いづらい。


こんな綺麗なお母さんを目の前に、そんな事言えない。


「あ、飲み物出すから座ってね」


ニコっとしたお母さん。

やっぱ美奈子と雰囲気同じ。


だったら、あたしもあの母と同じなんだろうか…