暫く歩いて着いた場所は繁華街に面した裏手通り。
人数も少なく、なんだか穴場スポットに存在する位置。
まさしく路地裏。
「ここだよ」
そう言って美奈子が指差す所は地下。
石の階段が下る先に見えるのは地下の入口。
「え?ここ?」
「そう、ここ」
「ここって何?店じゃないよね?」
どう見たって店とは言い難い。
なにしろ、こんな所にお店があるなんて誰も分かんないだろう。
「うん?店だよ。まぁ、でも見つけづらいから常連さんが多いのかな?」
「なんでこんな所知ってんの?」
「何でって、ママの店だから」
「えぇっ!お母さん?」
そう驚くあたしに美奈子は薄ら笑った。
「嘘ついてごめんね、若菜ちゃん。ママがね新作ケーキを作ったから味見してほしいって言ってきたの。だから若菜ちゃん誘った。ごめんね、嫌だった?」
「別に嫌じゃないけど、あたしで良かったわけ?」
「若菜ちゃんがいいから誘ったの。早くいこっ、」
スタスタと階段を降りて行く美奈子。
こんな所に店があるとは思えないほどの一角だった。



