だからなのかも知れない。
授業中。…今日はほぼ1日中と言っていいほど彼の存在を気にしてた。
朝、見た所為なのかも知れない。
いつもなら全くと言っていいほど気にしない彼の存在が気になって仕方がなかった。
「…若菜ちゃんっ、」
ドクンと心臓が波打つような美奈子の声。
「な、に?」
「なんか元気ないね、なんかあった?」
「別に」
顔を背けるようにして呟いたあたしの目の前に美奈子の顔が突然現れる。
「若菜ちゃん!」
「だから、何?」
グッと掴まれた腕に視線を落とす。
「約束したじゃん」
「…約束?」
「ほら、ケーキ食べに行こうって」
「あー…」
そうだった。
昨日の今日なのにもう忘れてた。
「もしかして忘れてたの?ね、行こ?」
ニコっと笑う美奈子。
その笑顔にいくらなんでも嫌とは言えなかったあたしの手を美奈子はそっと離した。
「行くだけだからね」
「うん、いいよ。」
「……」
「なんか若菜ちゃんとこーやって一緒に行きたかったんだ――…」
そんなひたすら話してる美奈子にあたしはただ、相打ちをしてるだけだった。



