澄んだ空の下で


夜の仕事をする母は頻繁に酒を飲むようになった。

家事なんてもちろん家の事すら何もしない母に正直、嫌気がさしてた。


三つ上の姉は、高校卒業と同時に家を飛び出し、それっきり。

こんな家、嫌だと言ったのが最後だった。


たまにあたしには連絡があるものの、それ以降帰っては来ない。

だからあたしは思った。

産まれなきゃ良かったって、そう思ってた。


「若菜、ご飯は適当に食べといて」

「…うん」

「もう行くから」


タバコをもみ消した母は立ち上がり、あたしの前から姿を消す。

母が出て行った部屋をグルリを見渡したあたしは、どうしようもないため息がまた新たに降り注いだ。


食器もそのまま、片付けさえ出来ない母がよく仕事が出来たもんだ。

でも、そうなったのも父が亡くなってからだから昔からではないらしい。


そんな事を片付けながら考えていると、不意に聞こえた振動音に視線を向けた。

鞄の中から伝わる振動に手を伸ばし、スマホを掴む。



…美奈子。


何の用よ、と言わんばかりにため息を吐き捨てスマホを耳に当てた。