「何?」
振り返る先に見えるのは少し表情を崩したアオの顔。
「お前さ、ホントは帰りたくねぇんじゃねーの?」
「何で?」
「俺の直感」
「それ、間違ってるから」
フッと笑ったあたしはヒラヒラっと手を振って、アオに背中を向けた。
アオには悪いけど、学校では話したくないの。
女から恨まれるのも、標的にされるのも、何かを奪われるのも、勘弁してほしい。
もう、こりごりなんだよ。
だから、一人で居たいの。
そのほうがよっぽど楽。
なのに、なんでアオはあたしを心配するの?
なんで、美奈子はあたしに構う?
結局、彼さえ見ることが出来なかったあたしは途方にくれるようにマンションに向かった。
夕方になろうとする青空がオレンジ色に染まりかけている。
何だか綺麗なような、奇妙なようなよく分からない色に視線を逸らせてしまった。
暫く経って見えてきたのは6階建てのマンション。
その5階に位置する一番端のカギ穴にゆっくりと鍵を差し込む。
結局帰るのはここしかなくて、あたしの居場所はここしかない。
もぬけの殻の様に、ここに居座る事しか出来たないんだ。
と、思ってみても涙さえ滲まない自分に呆れ返った。



