「これ、全部やるから」
不意に聞こえた声にハッと我に返る。
そうだ。
…恭のマンションだった。
ガラステーブルの上に置かれたビニール袋と木箱。
「うわっ、なにこれ!」
そっと開いた木箱の中からメロンが飛びだし、思わず声を上げる。
「なにって、メロン」
「いや、見れば分かるよ」
「何って言うから」
「違うよ。凄いねって言う意味。これ高級品じゃん」
「へー…そう」
どうでもいい様に呟いた恭は疲れた様にドサっとソファーに深く座った。
「ねぇ、これ食べない?」
「はぁ?」
恭は座った身体をソファーに倒すと、面倒くさそうにあたしに視線を送る。
「だから、これ食べようよ」
「帰って食えよ」
「だって、こんなにあるんだよ。あたし一人で無理だから」
「あー…」
ビニールの袋には桃にリンゴにマンゴーに…
これも絶対高級なんだろうと言う果物がありふれてた。



