今、いる現実が分からなくなる。
あたしは何でこの人と居るんだろうと。
今、思うとノコノコと着いてきてしまった自分に戸惑った。
思い出す美奈子とアオの言葉が脳を過る。
係わっちゃいけない。と言った二人の言葉。
それは、住む世界が違うと言う事を本当に真のあたりにしたから――…
「…どした?」
不意に聞こえた声にハッとする。
素早く首を振って、誘導されるままに中に入って行く。
「…すごっ、」
リビングに入って、思わず漏れる驚きの声とともに、反射的に身体が窓へと動いた。
リビング一面のガラス張りの空間。
そこから見える景色は絶叫とは言えないほどの街並みが広がる。
いつも居るあのビルとは比べ物にならないくらいの街の広さ。
ここから見渡すのがあまりにも絶景で、声を失うくらいだった。
多分、きっとあたしは1日中ここに居れると思った。
この景色に圧倒される。
どれくらい先の街まで見えるのかなんて分んない。
ただ、あたしはその景色の所為で動く事すら出来なかった。



