「つかさ、お前。それ今言うか?普通登る前に言うだろうが」
「…だよ、ね。だけどっ、」
鍵穴に差しこんで回した鍵が、ガチャンと秘かに音を立てる。
まさに、秘密の鍵穴みたいでドキドキしてた。
そして上と下の2か所に付いている鍵を開けると、その重そうなドアを恭は開けた。
「来いよ」
開けられたドアの前でボーっとするあたしに、恭は小さく声を出す。
その言葉に釣られてコクンと頷き中に入ると、恭はもう一度、中から鍵を掛け直した。
「なんか、凄いね。そもそも何でこんな所の鍵持ってる訳?」
「作ったから」
「つ、作ったって…」
「嘘も方便ってやつ」
「なんだかよく分かんないけど、アンタ凄いんだね」
「さー、分かんねーけど」
どうでもいい様な呟きをすると、恭は先を歩く。
丁度出て来た所は人気の少ない、細い廊下。
その先を進んで角を曲がると、何故か喫煙所がある。
そしてその先に見えるのが物凄い広いロビーだった。
8層の吹き抜けの圧倒的な空間の下にはくつろぐソファーがある。
植栽の潤いに水のせせらぎが聞こえる。
ここは高級ホテルですか?
と、でもいいたいくらいに広い。
そしてエレベーター空間に来ると、見上げる天井には綺麗なシャンデリアがあり、まるでお城に来たようだった。



