見えなかったレンガの奥が上に登れば隅々まで分かる。
1階部分は真っ白な壁で覆われてて、上を見れば部屋のベランダがズラリと並ぶ。
そして、見下ろす先に見えたのは白い鉄のドアだった。
「あそこ、なの?」
「そう。つか、ここ飛べる?」
「ま、まぁ…登るよりは大丈夫」
そう言って、少しドキドキしながらも飛び降りた。
「お、すげぇじゃん」
恭は笑いながら軽やかに飛び降りる。
ドアの前まで行くと、ポケットからジャラジャラと音を鳴らしながら恭がキーケースを取り出した。
…なんか、いけない事をしてるみたいで怖い。
「ね、ねぇ…やっぱいいよ」
隣に居る恭のシャツの裾を軽く引っ張る。
「何で?」
「だれか居たらさ、」
「いや、だから俺一人だって」
「そーじゃなくて、ここ開けたらさ」
「大丈夫。このマンション詳しいから」
「いや、そーじゃなくて。なんか悪い気がする」
キョロキョロ辺りを見渡すあたしに、恭はキーケースから1本の鍵を抜き出した。



