「あの…ですね」
発進してから小さく口を開くと、恭は不思議そうにチラッとだけあたしを見た。
「うん?」
「あの、何であたしなんですか?」
「え、なに?また敬語復活?」
クスクス笑う恭に思わず深く深呼吸をしてしまう。
「え、いや…だから。なんであたしなのかなって」
「なにが?」
「ほらなんか不思議でしょ?あたしなんかが乗ってて」
「え、だって果物」
「あ、いや…そうだけど。ほ、ほら何であたしに?」
「だって腐っても、捨てても勿体ねーじゃん?ま、貰いものだけど食わねーし」
「あー…なるほどね。けど、他にいるでしょ?あげる人」
「いねーし」
「友達いないの?」
「友達ねー…いねーかも」
フッと笑った恭のその横顔に一瞬、目が奪われそうになる。
なんでこうも綺麗な横顔なんだと…
「あー…え?男友達とかさ、」
「いや、居たとしても食わねえから」
「あ、そう…」
「だって、アンタ好きそうな顔してんじゃん」
「は?」
思わず口から声が零れ落ちる。
あたしが、好きそうな顔って?



