「あー…うん。車、ここに停めてっから」
「えっ、車?」
「そう」
「車で来てんの?」
「住んでる所からじゃ遠いから」
「そ、そう…って、何処に住んでんの?」
「都心」
「はぁ!?都心?」
思わず大きな声を出してしまった。
都心と言えば街の中心部に当たる位置。
家なんてあまりなくて高層ビルがいっぱい建っている場所。
土地だって高く、物価だってそう安くはない。
「知り合いが居っからさ、ここに停めてんの」
真っ白な高級車とも言える車の前で恭は立ち止まる。
「へー…」
頭が何だかついていけず、理解が出来ない。
恭は運転席から助手席のドアを開け、顔を覗かせた。
「乗れば?」
「えっ、あ、あぁ…」
一瞬戸惑ったけど、あたしは遠慮気味に乗り込みシートに背をつけた。
フワフワとするシート。
そこからもう高級感が漂ってくる。
車内に広がる心地いいアクアの匂い。
この初めての体験に、思わず身体が硬直しそうだった。



