澄んだ空の下で


「ねぇ、何処行くの?」

「家」

「えっ、家?」

「そう」

「誰の?」

「誰って、俺んちしかねぇだろ?」

「いやいや、ちょっと待ってよ。あたし、無理だから―――…ちょっ、」


恭が立ち止まった所為で思わず目の前の恭に額をぶつけてしまった。


痛ったぁ…


「だって、家にあんだから仕方ねぇじゃん」

「そんな事言われても…」


無理だよ。

だって、有名なんでしょ?

お金持ちなんでしょ?


きっと豪邸。

そんな所に行けるわけがない。


誰かに出会ったらあたし、どうすんの?

ほんとに、嫌だから!


「つか、俺一人だから」

「え?」


あたしの考えてた事を読み取ったのか、恭は口角を上げる。


「今、誰かに会ったらどーするって思った?」

「…――っ、」

「やっぱし」


フッと鼻で笑った馬鹿にした様な笑みが思わず勘に障る。


「でも、大丈夫だから」


そう続けて言った恭に少しだけ、安堵のため息が漏れた。