「急にひどい雨ですね」 そう言いながら見上げる彼に、 「ありがとう……」 と、彼女は微笑んだ。 雨と地面の匂いにまぎれ、彼の上着から僅かな煙草の匂いがした。 彼もまた、彼女が落とした映画のタイトルを見ていた。 「何だかやみそうにないですね」 「傘がいるなんて思わないもの」 二人の共通の話題…… 彼が彼女の好きな食べ物を。 彼女が彼の吸う煙草の銘柄を。 それぞれが知るのはまだ先の話だ。