彼女の愛すべきドビュッシー

だれもいない音楽室で、

僕はピアノを弾いていた。

今日はそんな気分なのだ。

彼女を思い出して、

なんだか彼女が恋しくて。

「せんせい。

 なにひいてるの?」

女の子たちが声をかけてきた。

「おとこのくせにぴあの~?」

そういう子もいた。

「あのなあ、

 バッハだって、

 ベートーベンだって、

 有名な人は男だろうが。」

「あ、そっかー。」

「せんせい、ぴあのひけるんだー。」

「うけるー。」

「で、なんのきょくですか?」

「僕の大好きな曲だよ。

 っていうか、

 まだこれしかちゃんと弾けないんだ。」