恋と愛は違う。

 そう言われて、とても優しくていい人と結婚する約束をした。

「夜は遅くなるかもしれないけど電話するから」

「うん」

 仕事が終わった帰り、いつものように車で送ってくれた彼が窓から手をふる。
 私もニッコリ笑顔でそれに手を振り返す。

 何も不満はない。
 このまま結婚すれば私はきっと幸せになる。
 それが分かっているのに……何だろう、この満たされない感じ。

(はぁ……こんな事誰にも言えないけど、このままでいいのかな)

 部屋のカギを取り出して、アパートの入り口に向かったところで足を止める。

 見覚えのあるスーツ姿。
 ひょろりと痩せたそのシルエットに胸がドキリとする。