「どうしてそんなこと知ってるの?」


「だって、聞いちゃったんだもん」


「聞いちゃったって、誰に?」


「それはねー。………トイレの神様だよ!」







 * * *




ある朝、廊下ですれ違いざま興味深い話を耳にした。



「トイレの神様ってさ、神様言われてるけどやっぱりただの噂好きの人間だったね」


「だよねー。もしかして、相談しに行っちゃった?」


「そんなわけないじゃない。あたしは初めから信用してなかったし」


「信じてる人、ほんと馬鹿だよね」



キャハキャハ笑って、彼女たちは歩いて行った。

足を止めずに耳をそばだてれば。



「トイレの神様、あたしたちの話した事を言いまわってたらしいよ」


「サイテー。あたし、信じてたのに!」


「それって、平井さんが伊藤君を好きって話?」


「他にもー……」


「最近噂になってるトイレの神様って何?」


「知らないの?校舎裏に一番近い女子トイレに時々現れるんだよ」


「てゆーか、それ普通にトイレに入ってる人でしょ?神様名乗ってる痛い奴、ほんとにいたんだね」



などなど。


ああ、もうクラス教室前廊下も終わる。

もっと聞きたかったけど、移動教室の最中で、立ち止まるわけにはいかない。

ここはおとなしく引きさがろう。






教室移動時と、各種休み時間。

朝聞いた噂を確かめるため、いろんなグループに紛れに行った。



「今すっごい噂になってるトイレの神様だけどさー」


「あれな。相談した翌朝に早速バラしやがったやつ」


「え?そんな早かったか?」


「早かったよ。登校してすぐ、クラスメートの前でバラされてたんだぜ」


「公開処刑かよ。酷ぇ」


「かわいそう……」


「伊藤君、詳しいんだね」


「さすがは平井の好きな人!」


「ねぇ、伊藤君。あたしも相談行ったんだけど、広まってなーい?」


「え?なに相談したの、教えてー」


「もうっ、秘密だってば!」


「いいじゃない、どうせもう広がってるって」


「助けて、伊藤くぅん」


休み時間が終わる。

今回はここまでだね。



結果。

普段の会話に混じり断片的に聞き取れたのは、同じようなトイレの神様への悪評だった。